Tigris試験に関する情報
Tigris試験とは?
Tigris試験1)は、米国で実施された第3相多施設共同無作為化オープンラベル比較試験です。エンドトキシン血症かつ重度の臓器障害を有する敗血症性ショック患者を対象に、トレミキシン治療の有効性と安全性を評価しました。本試験では、先行するEUPHRATES試験2)でPMXの有効性が示唆された患者集団のデータ3)を事前情報として活用し、ベイズ法を用いてPMX治療の有益性を評価する試験デザイン4)が採用されました。
背景
*Endotoxin Activity Assay
- 1)Neyra JA et al. (2026) Lancet Respir Med 14:443-52
- 2)Dellinger RP et al. (2018) JAMA 320:1455-63
- 3)Klein DJ et al. (2018) Intensive Care Med 44:2205-12
- 4)Tomlinson G et al. (2023) Crit Care 27:432
試験デザイン
MODS:Multiple Organ Dysfunction Score
SOFA:Sequential Organ Failure Assessment
主な結果
Tigris試験の理解を深める
エンドトキシン活性(EAA)の測定
EAA (Endotoxin Activity Assay) は血液中のエンドトキシン活性を評価する検査法です。Tigris試験では、患者組み入れ基準の一つとして使用されました。
ベイズ法とは
ベイズ法は、過去の知見(事前情報)と今回得られたデータを組み合わせて評価する統計手法です。
治療の有効性を確率として示せることが特徴です。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.患者背景は群間で均衡していましたか?
性別、人種、重症度、昇圧剤投与量、感染菌種、EAA値などについて、Tigris試験とEUPHRATES試験の対象集団間、またTIGRIS試験内のPMX群と対照群間で、それぞれ大きな違いはなかったと報告されています。
Q2.感染菌種はどのような分布でしたか?
PMX群と対照群を合わせた感染菌種の内訳は、グラム陰性菌感染28%、グラム陽性菌感染20%、混合感染6%、培養陰性38%と報告されています。
Q3.Tigris試験単独での90日死亡率の結果はどうでしたか?
Tigris試験単独の90日時点での死亡率の比較では、PMX群(介入群): 46 /106(43.4%)、対照群:31 / 51(60.8%)であり、死亡率リスク差は17.4%、カイ二乗検定でのP値(論文Table2の数値をもとに社内で算出した値)は0.041であり、有意差をもってPMX群の死亡率が低い結果となっています。
Q4.NNT(治療必要数)とは何ですか?
NNT(Number needed to treat)は、1人の死亡を防ぐために何人の患者に治療を行う必要があるかを示す指標です。本試験の統合解析の結果では、28日後で9.7、90日後で6.5と報告されています。
Q5.オッズ比の95%区間が1をまたいでいても有益性が示されたのはなぜですか?
ベイズ統計では、結果を「有意か否か」という二分法ではなく、「治療が有益である確率」として解釈します。本試験では、Tigris試験データとEUPHRATES試験データを統合した解析で、PMX治療が有益(死亡オッズ比が1未満)である確率が95.3%であり、事前に設定した閾値の95%を上回る結果が得られました。
Q6.調整済み解析(adjusted analysis)の結果が示されていますが、具体的にどの因子を調整したのでしょうか?
ベースラインのAPACHEⅡスコアで調整されました。
Q7.有益性の事後確率とは何ですか?
有益性の事後確率は、得られたデータに基づいて治療が有益である確率を示す指標です。本研究では、PMX群の死亡オッズ比が1未満である確率を表しています。
Q8.なぜTigris試験ではベイズ法が用いられたのですか?
ベイズ法は、既存のヒストリカルデータを活用し、限られた症例数でも治療効果を推定できる解析手法です。大規模な症例登録が難しい敗血症のような疾患の臨床試験において特に有効とされています。本試験は、FDAの「医療機器の臨床試験におけるベイズ統計の使用に関するガイダンス」に準拠して計画されたと記載されています。
Q9.EUPHRATES試験との統合解析はどのように行われましたか?
EUPHRATES試験データのうち、Tigris試験の対象患者に合致する米国からの179例をヒストリカルデータとして使用し、75%の重み付けを行って、TIGRIS試験157例のデータと統合解析しました。
Q10.なぜEUPHRATES試験データは75%の重みで使用されたのですか?
過去の試験と今回の試験では、実施時期や施設などが異なるため、予期しない違いが生じる可能性があります。そのため、過去データをそのまま用いるのではなく、不確実性を考慮して少し控えめに扱い、75%の重み付けで解析に組み込む方法が用いられました。
Q11.論文はいつ発表されましたか?
本試験結果の論文は、2026年3月23日付でLancet Respiratory Medicine誌に掲載されました。論文発表と同日に、米国シカゴで開催されたSociety of Critical Care Medicine(SCCM)2026で、筆頭著者のDr. Javier Neyraによる発表が行われました。
関連資料ダウンロード
エンドトキシン性敗血症性ショックに対するPMX療法:Tigris trial
エンドトキシン性敗血症性ショックに対するPMX療法の有効性を検証した、米国多施設共同無作為化臨床試験「Tigris試験」の結果を解説。
主要評価項目である28日死亡において、治療の有益性確率は95.3%と目標を達成。90日死亡における有益性確率は99.4%とさらに高値を示し、長期的な予後改善効果が示唆された。
ICU患者の感染と転帰の評価における
エンドトキシン活性(EAA)と各種バイオマーカーの比較
ICU入室患者の血中エンドトキシン活性(EA値)と敗血症関連バイオマーカー(PCT、プレセプシン、乳酸、IL-6)を同時測定し、以下の(1)(2)について比較分析した。
(1)バイオマーカー間の測定値の関連性
(2)各バイオマーカーの感染症検出や患者の転帰予測に対する有用性
ベイズ法:敗血症臨床試験を前進させる可能性
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