急性腎障害(AKI)とは
急性腎障害(acute kidney injury; AKI)は、急激に進行する腎機能低下により生体の恒常性が破綻している病態で、入院患者において、成人では5人に1人、小児では3人に1人がAKIを発症しているとの報告があります1。Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)によるAKI 診療ガイドラインにおいては、以下のいずれかにより定義されるとしています2。
- 48時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が≧0.3 mg/dl上昇した場合
- SCr値がそれ以前7日以内に判っていたか予想される基礎値より≧1.5倍の増加があった場合
- 尿量が6時間にわたって<0.5 ml/kg/時に減少した場合
また重症度分類については以下の表の通り提示されており、AKIの重症度が高度になるとともに死亡率が上昇することが知られています。中でも急性血液浄化療法を必要とするAKI症例は重症度が高く、本邦のDPCデータを用いた検討によれば、成人ICUにおける急性血液浄化療法を必要とするAKI患者の院内死亡率は40%以上であることが報告されています3。
AKI重症度 | SCr | 尿量 |
---|---|---|
ステージ1 | 基礎値の1.5-1.9倍 または ≧0.3 mg/dlの増加 |
6-12時間で<0.5 ml/kg/時 |
ステージ2 | 基礎値の2.0-2.9倍 | 12時間以上で<0.5 ml/kg/時 |
ステージ3 | 基礎値の3倍 または ≧4.0 mg/dlの増加 または 腎代替療法の開始 または18歳未満の患者ではeGFR<35 ml/min/1.73㎡の低下 |
24時間以上で<0.3 ml/kg/時 または 12時間以上の無尿 |
AKIの原因の約40%は敗血症であり、敗血症性AKI患者の院内死亡率は約50%と高いことが報告されています4,5。敗血症性AKIでは、傷害を受けた腎細胞あるいは全身の免疫細胞などから過剰に産生される炎症性サイトカインが、全身の炎症病態および臓器障害を引き起こす主要な因子であることが知られています。サイトカインの中でも、インターロイキン-6(IL-6)の血中濃度上昇は、AKI患者の死亡率の上昇、腎機能回復の悪化と強く関連することが報告されています6。
敗血症性AKIに対する急性血液浄化療法は、体液・電解質バランスの維持管理、酸塩基平衡の維持による腎機能の補助と合わせて、炎症性サイトカインなどの病因物質の除去による病態の改善にも寄与することが期待されます。
- 1“World incidence of AKI: a meta‒analysis.” Clin J Am Nephrol (2013) 8:1482‒93.
- 2“KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury” Kidney Int (2012) 2:S1-138
- 3“Temporal change in characteristics and outcomes of acute kidney injury on renal replacement therapy in intensive care units: analysis of a nationwide administrative database in Japan, 2007-2016” Crit Care (2019) 23:172
- 4“Epidemiology of acute kidney injury in critically ill patients: the multinational AKI-EPI study” Intensive Care Med (2015) 41:1411-23
- 5“Rates, predictors, and mortality of sepsis-associated acute kidney injury: a systematic review and meta-analysis” BMC Nephrol (2020) 21:318
- 6“Blood Interleukin-6 Levels Predict Multiple Organ Dysfunction in Critically Ill Patients” Shock (2021) 55:790-5